みなさん、こんにちは。ノベルエラトラベルの笠原です。アジア各国を中心に海外ビジネス視察ツアーの企画をはじめ、格安航空券の手配や入国査証(ビザ)の代行申請など、旅行にまつわるサポートを担当しています。
さて、今回のテーマは「最安1円!LCC時代の幕開け!国内旅行感覚で気軽に行ける香港」です。アジアを代表する世界都市として成長し続ける香港。街へと繰り出せば、アジア色と西洋色が絶妙に混じり合った多彩な魅力に圧倒されます。
そんな香港へは日本からおよそ3時間半のフライトです。これまでも香港は、日本人にとっては「安近短」で訪れることのできる手軽な旅行先として、また一部のバックパッカーたちにとっては、アジアやヨーロッパへと向かう最初の足掛かりとしての役割を担ってきました。
近年は、格安航空会社LCC(Low Cost Carrier)が香港と日本各地を結ぶフライトを運航しはじめ、日本を訪れる香港人、香港を訪れる日本人観光客の数字はともに順調な伸びを見せています。
国内旅行のような感覚で訪れることができるようになった香港。そこで今回は、その旅の羽となるLCCについてご紹介します。
LCCの特徴
LCCは「Low Cost Career」を省略した名称で、日本では「格安航空会社」と呼ぶこともあります。徹底したコスト削減によって低運賃を実現しているのが最大の特徴であり、利用者は低運賃を享受できる一方で、大手航空会社で受けられるようなサービスを期待することはできません。
例えば、LCCは、接客用のオフィスや常設のカウンターを持たないことがあります。そのため、利用者は予約からチェックインまでの作業を主にインターネットで行うことになります。チケットの変更やキャンセルも受け付けられないか、手数料がかかります。また、手荷物の数と量は厳しく制限され、空港内ではゲートや乗降口に不便な場所を割り振られることが多くなります。
さらに、小さな機体を利用することが多いため、座席は狭く席数やトイレ数なども少なくなります。機内エンターテイメントである音楽、雑誌、映画などは原則として提供されず、機内食や飲料は有料販売です。
このように、運航コスト・人件費・航空券販売コストなどを徹底して削減や低減した結果、安いチケットを提供しているのがLCCなのです。
日本と香港間に就航しているLCCを比較
2015年春現在、日本〜香港間にはLCC4社「ピーチ・アビエーション」、「バニラ・エア」、「ジェットスター」、「香港エクスプレス」が就航しています。それぞれの持つ特徴や路線、価格帯、実際に使用した感触についてまとめてみました。
ピーチ・アビエーション
日本企業であり、日本人に人気のあるLCCです。ANA系列であることもイメージの高さに影響を与えています。
日本初のLCCとして注目を浴びましたが、さらに関西空港を母港とし、機内アナウンスで関西弁が使われる、販売される機内食に大阪名物など、目をひき、食欲をそそるメニューがあることなどが、その後の人気を確立する要因となっています。また、日本人アテンダントが中心であることも日本人利用者にとってピーチ・アビエーションを選択する際の重要なポイントとなっているのは確かです。
ただ現時点では、香港との航路が関空と那覇に限られること、人気であるがゆえにチケットが取りにくいなどの難点もあります。それでもなお、LCCとはいえ、ある程度の機内サービスを望む日本人にとってはありがたい選択肢といえそうです。
就航路線と価格 | ||
大阪(関西)〜 香港 | 1日2便 | 片道8,880円~ |
沖縄(那覇)〜 香港 | 1日2便 | 片道8,880円~ |
季節や時間限定のセールが定期的に行われていて、より低価格で利用できることもあります。
バニラ・エア
バニラ・エアは、ANAによる100%子会社のLCCです。2012年の就航時点では、アジア最大LCCとされるエアアジアとANAとの共同出資会社「エアアジア・ジャパン」として運航していましたが、その後、エアアジアは提携を解消し、一時的な運航休止期間を経て「バニラ・エア」として再出発を果たしました。
バニラ・エアの特徴は「リゾート」に特化しているところにあるといわれますが、これは日本国内線の場合のみ。国際線は現在、成田〜香港間と成田〜台湾間のみの運行となっています。
バニラ・エアの最大のメリットは、ANAの100%出資であることから、機体整備やアテンダントの教育などに日本スタイルを期待できるところにあります。また、大阪カラーが強く積極的な戦略を繰り広げるピーチ・アビエーションに対して、LCCでありながらより安定した顧客サービスを提供しようとする東京スタイルが関東人に好まれているようです。
運航数の少なさというハンデはありますが、ANAの子会社という安心感と、原則として20kgまでの預け入れ荷物が無料であるところは、他社に対して大きなアドバンテージといえそうです。また、4人以上の同時予約による10%引きなどの他社にない割引サービスにも魅力を感じます。
就航路線と価格 | ||
東京(成田)〜香港 | 1日2便 | 片道8,890円~ |
家族やグループでまとめて購入すればさらに割引が可能である上、手荷物を預けるための追加料金がないことを考えると、お得感があります。ただし、チケットの取りにくさはピーチ以上です。
ジェットスター・ジャパン
ジェットスター・ジャパンは日本の会社ですが、オーストラリアの大手航空会社カンタスグループにも属するLCCです。日本航空も出資しているため、カンタスだけでなくJALマイレージが利用できるほか、国内線はJALとアメリカン航空とのコードシェア、国際便はカンタス航空とのコードシェアで運航されるという、大手がバックを支えている安心感を持つLCCといえます。
関空便に続き2015年6月より成田にも就航し、国際路線は今後順調に拡大されていく予定の今後が楽しみな成長株的LCCです。また、日本のLCCとしては後発となったことから、他社運賃よりも10%下げる「最低価格保証」を行い、価格競争面で一歩先んじています。日本〜香港間のフライトを予約する時には、必ずジェットスターのホームページで料金比較を行うべきでしょう。
ほかにも、ウェブチェックインが可能であること、ローソンやミニストップのロッピーでチケット購入ができること、予約内容の変更手数料が無料になるオプションを、オプション代金分の各種バウチャーが提供されることから事実上無料でつけられることなどのメリットもあります。
2012年の運航当初に起きた整備不良やシステムトラブルなどが利用者に与える不安を、これからの国際線拡大でどう解消していくかも見守りたいところです。
就航路線と価格 | ||
東京(成田)〜香港 | 1日1便 | 片道7,500円~ |
大阪(関西)〜香港 | 1日1便 | 片道5,990円~ |
価格は、「最低価格保証」を行っているため、基本的にどこよりも安くなります。予約後の他社セールなどには通用しませんが、予約時にちょっとした手間をかけて価格比較をすることで安心の最安値LCCチケットを確保できます。
香港エクスプレス
現在、日本〜香港路線に就航しているLCCで唯一の海外資本となるのが香港エクスプレスです。香港初で唯一のLCCであり、アジア各地へとその路線網を着々と広げ、日本へは東京(羽田・成田)、名古屋、大阪、福岡への直行便を運航しています。
一番の特徴は、日本人にとって外資系LCCであるところでしょう。当然、機内スタッフのほとんどが香港人であり、乗客も大半が香港人または中国人です。最近になって、日本便には日本人スタッフまたは日本語の分かるスタッフが乗り込むようになってきましたが、日系LCCのように日本語でスムーズな応対を受けることは期待できません。
また、機内サービスにおいても、ほかの3社と比較して劣っているのは周知の事実です。スタッフや設備に問題があるのではなく、日本と香港におけるサービスに対する認識の相違がはっきりと表れているのです。
日本人利用者の多くが同じLCCであれば日系を選ぶ傾向にあるのは確かです。ただ、香港エクスプレスには他社にはない路線とフライト数の多さという利点があります。さらに、香港エクスプレスのセールは他社の追随を許さない低価格を実現している点も見逃せません。
就航路線と価格 | ||
東京(羽田)〜香港 | 1日2便 | 片道9,500円~(税別) |
東京(成田)〜香港 | 1日2便 | |
名古屋〜香港 | 1日1便 | |
大阪(関西)〜香港 | 1日3便 | |
福岡〜香港 | 1日1便 |
格安セール価格では、片道1円や1ドルという驚きのチケットも販売したことがある香港エクスプレス。2,000円程度の限定チケットが定期的にセールとして登場しています。
まとめ
LCCの登場に対して、大手航空会社はサービス面での差別化と限定的ながら低価格チケットの提供で対抗しています。航空業各社にとっては苦しく激しい競争の渦中といえそうですが、利用者側としては、サービスは向上し価格は低くなるというありがたい状況が生まれています。
また、香港〜日本路線には新たにエアアジアが本格参入する予定となっています。今回は楽天とのタッグのもと、新生「エアアジア・ジャパン」として夏以降、中部空港をベースとして徐々にアジア各地へと就航路線を増やしていくことでしょう。
競争がより激化することが予想されるLCC香港〜日本間。今後は、より多くの選択肢が生まれ、利用者はサービス・価格、そして安全性という3点を比較することで賢く手軽に香港旅行を楽しめるようになりそうです。
※就航便数は季節によって変わります。