コンシェルジュのRachelです。主にHSBC香港やスタンダードチャータード銀行、恒生銀行など、香港で開設できる銀行口座に関するサポートを担当しています。
さて、今回のテーマは「6大国際ブランド!世界に広がる中国銀聯(ユニオンペイ)まとめ」です。香港で、HSBC香港やスタンダードチャータード銀行などの口座を開設すると、日本でも加盟店が急増している中国銀聯(ユニオンペイ)というブランドのデビットカードが発行されます。
そこで今回は、ユニオンペイについて、そして「日本のATMで使えますか?」や「日本でのショッピングに使えますか?」など、ユニオンペイに関するご質問にお答えします。
中国銀聯(ちゅうごくぎんれん)とは
中国銀聯(ちゅうごくぎんれん)は、ユニオンペイとも呼ばれる、中国を中心に拡大しているオンライン決済システムを運営する企業です。
これまでも中国に銀行はありました。ただ、それぞれの銀行が独自の経営システムやルールを運用していたため、金融機関の間で銀行としての機能を共用しきれずにいました。例えば、ある銀行の支店で口座を作っても、他銀行はもちろん同じ銀行の他支店でさえ、残高照会、預け入れ、引出、送金といった銀行としての基本的なサービスを受けられないという状況が多々起きていたのです。
この不便さを解消し、銀行におけるサービスの標準化と統一化を目指して、中国国務院の同意と中国人民銀行の批准のもと、中国国内の80を超える金融機関が共同で設立したのが中国銀聯です。中国銀聯は、加盟銀行間をオンラインで結んで各銀行間での決済を可能にし、自主ブランドの銀聯カードによってリスク管理された便利さを享受できるシステムを構築しました。
銀聯カードが短期間で巨大ブランドへと成長した理由には、国家規模のバックがついていたことや、時代と中国人民の強い要望が存在していたことのほか、デビットカードという形態をとったところにもあります。
銀聯カードがデビットカードになったのには、キャッシュカードは銀行以外の場面で使えず利便性の面で劣るという事実と、クレジットカードは中国における個人の収入格差が大きく信用が十分ではないところから導入が難しいという現実が影響しています。その点、銀行口座の残高を利用限度とするデビットカードならば、この利便性と与信性の両面をカバーできたのです。
中国銀聯は、この銀聯カードへの提携金融機関を積極的に増やし、中国の銀行システムと銀行カード産業の両方を安定させ、さらに発展させることに成功しました。その結果、銀聯カードは中国国内において巨大なネットワークを構築し、そのネットワークを世界にも広げつつあります。日本ももちろん例外ではありません。
中国銀聯の歴史
中国銀聯が設立されたのは2002年3月のことです。同年8月には自主ブランドである銀聯カードを発表しました。
中国国内におけるクレジットカードの普及率が低かったことと、中国経済発展の好調さに乗り、銀聯カードは急速に普及していきます。
2005年に三井住友カード株式会社と提携を結んだのが中国銀聯の日本デビューとなりました。2010年には三菱UFJニコス株式会社とも業務提携を開始し、現在は中国銀行と中国工商銀行の東京支店でも銀聯カードを発行しています。
2008年頃から、百貨店や大型店舗などが相次いで銀聯カードを決済手段とする加盟店となったのを皮切りに、日本を訪れる中国人旅行客数の増加とともに加盟店数を伸ばしています。同時に、日本国内のATMを利用した現金の引き出しサービスも可能となりました。
2013年12月末時点で銀聯カードの発行数は42億枚を超えたとされます。これはクレジット業界のトップであるVISAに迫り追い抜く勢いであり、中国銀聯は、世界最大規模のオンライン決済システムを運営するカード会社として世界に約760万店の加盟店を持つまでに成長しています。
5大国際ブランドとは
世界各地でオンライン決済システムが整いつつある中、銀聯カードはクレジットカードと肩を並べるようになりました。中国国内では圧倒的なシェアを誇り、世界的にもクレジット業界のトップに食い込む勢いで発展し続けています。銀聯カードはあくまでデビットカードであり、ショッピングしたその場で銀行から引き落とされるという条件が付帯しているものの、その利便性はクレジットカードと比べても遜色ありません。そのため、これまでクレジット業界に君臨してきた5大国際ブランドに加わる第6番目のカードとも呼ばれるようになりました。
世界各地で通用するクレジットカードの中でも知名度や信用度の高いVISA、MasterCard、JCB、American Express、Diners Clubを5大クレジットカードまたは5大クレジットブランドと呼びます。このうち、VISAとMasterCardが発行枚数や利便性でほかの3カードを大きく引き離してはいるものの、これらの5カードは世界におけるクレジット決済の中心となってきたのです。
そこに登場したのが銀聯カードです。発行枚数では中国国内における圧倒的な保有率を背景に、クレジット業界トップのVISAをもしのぐといわれています。そして、銀聯カードを持つ中国人が世界中でオンライン決済を行っているという現実がその存在をさらに際立たせています。現在の銀聯カードは世界を股にかけて利用できる6大国際ブランドの1つとなり、またそのトップに限りなく近い実力をも備えているのです。
日本で発行されている中国銀聯カード
日本で発行される中国銀聯カードには大きく分けて3つのカテゴリーがあります。日本のクレジット会社が中国銀聯と提携して発行しているカードと在日本の中国系銀行が発行しているカード、トラベレックスが発行するプリペイドカードの3種類です。
日本のクレジット会社では、三井住友カードが三井住友銀聯カードとANA銀聯カードを、三菱UFJニコスが銀聯カードを発行しています。これらは、ATMなどでのキャッシングには利用できないものの、ショッピングシーンではクレジットカードとほぼ同様に使えます。また、ショッピングと同時に銀行から引き落とされるのではなく、クレジットカードのように月に1度の締切日でまとめて翌月払いとなるところも魅力的です。
中国系銀行では、中国銀行東京支店が発行する銀聯デビットカードと中国工商銀行による中国工商銀行デビットカードがあります。これらのカードは日本で発行されていますが、中国の銀行口座に連結しています。中国人の多くが自国内で口座を開設した時に自動的に付帯してくる銀聯カードと同様の使い方ができるため、日本人であっても中国国内でオンライン決済をしたい人で、さらに為替の影響を受けずに中国元での引き落としを希望する人に便利なカードです。
もう1枚が、トラベレックスが発行している銀聯キャッシュパスポートです。これは、銀行口座を持たずに現金をプリペイドの形で入金するところに特徴があります。銀行口座と連結していないという安全性とATMやインターネットを通じて手軽に再入金ができる利便性を兼ね備えています。もちろん、中国国内外の銀聯加盟店とATMで利用できます。
どの銀聯カードも、暗証番号入力と署名の両方が必要であることから、安全性の高さが保証されています。
日本で使える加盟店
日本国内における銀聯カード加盟店は急速に増えています。日本を訪れる中国人数は増加しているのに、中国元現金の持ち出しは制限されているという背景に後押しされる形で、中国銀聯が日本におけるクレジット決済大手である、三井住友カード、三菱UFJニコス、イオンクレジットカード、JCB、トヨタファイナンス、ユーシーカード、クレディセゾンと全面的な協力関係を結ぶことで加盟店を増やしているのです。
加盟店には、空港内のショップはもちろん、百貨店や量産店、旅行客に人気の商店街などが多く、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、コジマなどの電器店、マツモトキヨシをはじめとするドラッグストア、プリンスホテルなどの宿泊業でも、連銀カードによる決済が可能となっています。加盟店増加の流れは今後も続くと考えられています。
日本で使えるATM
銀聯カードを持っていれば、日本最大規模のネットワークを誇る、ゆうちょ銀行、セブン銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、イオン銀行、京都銀行、みずほ銀行のATMで預金の引き出しなどのサービスを受けることができます。
どこで発行された銀聯カードであっても、日本各地のATMを使って現金を引き出すことができ、それがカードと連結している銀行口座から引き落とされます。その際に引き出した現金と口座の為替が異なる場合には、その時点の為替レートや手数料がかかりますが、両替所や銀行に比べてレートが良いとされるうえ、その手軽さが魅力です。
まとめ
銀聯カードは、中国を訪れたりそこで暮らしたりするなら、必須アイテムといえます。それというのも、中国国内では都市部を離れるとクレジットカードの普及率がまだかなり低く、5大ブランドのクレジットカードであっても役に立たないことがまだ多いという事情があります。さらに、クレジットカードが使用できるとの表示があっても、手数料がかかるため店側が取扱いを嫌がることもあります。
その点、銀聯カードは中国国内の口座数だけカードも存在するといわれるほどの普及率を誇り、手数料がかかることもなくスムーズな決済が期待できます。また、暗証番号と署名の二重認証制度と、原則として口座残高が利用限度額という安心感もあります。
厳密にいえば、クレジットカードではないとはいえ、世界的に見てもトップクラスの利用者と加盟店の多さに加えて、今後のさらなる発展も期待されるという条件を持つ銀聯カードは「クレジットカードではない」というデメリットをすでにはね返しているといえるでしょう。
銀聯カードがあれば世界のどこでも不自由せず安全な決済ができる時代はもうそこまできているのかもしれません。
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